「漢文を読むとき、動詞の意味がはっきりしない」
「送り仮名はわかるけど、どこが述語か見抜けない」
「主語・目的語との関係がつかめず、文全体の意味がぼやける」
こうした悩みを抱えている高校生は少なくありません。漢文には日本語や現代文にはない独特の語順、句法、そして何よりも動詞の多様な用法と重要性があり、それをつかみ損ねると、意味がまったく取れなくなってしまいます。
しかし、逆に言えば、動詞の使い方を徹底的に理解すれば、漢文の読解は一気に楽になるのです。
この記事では、大学受験レベルの漢文読解において最重要とも言える「動詞の使い方」に的を絞り、基礎から実戦まで段階的に解説していきます。受験対策として漢文を得点源に変えたい方、あるいは古典分野のバランスを取りたいと考えている保護者の方も、ぜひご一読ください。
1. なぜ漢文では「動詞」がカギになるのか?
漢文は基本的に、「主語(主)+述語(動詞)+目的語(賓)」の語順で構成されます。日本語とは異なり、動詞が文の中心(述語)にあるため、動詞の意味や使い方を誤ると、文の骨格ごとズレてしまうのです。
また、漢文は1語に複数の意味を持つ「多義語」が非常に多く、とくに動詞では文脈によって意味ががらりと変わることがあります。
たとえば:
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為(なす/す):「行う」「作る」「〜と為す(みなす)」「〜のために」など
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見(みる/る):「見る」「現れる」「〜される(受け身)」
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得(える/う):「得る」「できる」「理解する」
これらの動詞の使い方を知っておくだけで、読解のスピードも精度も大きく上がります。
2. 基本の動詞タイプを3つに分類しよう
漢文の動詞は、以下の3タイプに分けて考えると整理しやすくなります。
【A】単独で意味を持つ「基本動詞」
漢字1語で意味が明確に伝わるタイプです。
| 動詞 | 意味の例 |
|---|---|
| 行 | 行く、実行する |
| 食 | 食べる |
| 言 | 言う、述べる |
| 思 | 思う、考える |
| 信 | 信じる |
→ これらは文の述語になりやすく、主語・目的語との関係を考えることで意味を明確にできます。
例:子曰、「學而時習之、不亦說乎。」
→ 子曰く、「学びて時にこれを習う、また悦ばしからずや。」
「曰」は動詞「言う」。「学ぶ」「習う」「悦ぶ」もすべて動詞です。
【B】補語や助動詞的に働く「補助動詞」
このタイプの動詞は、主に他の動詞を補って意味を作る役割をします。
| 動詞 | 用法・意味 |
|---|---|
| 得 | ~することができる(可能) |
| 能 | ~できる(能力) |
| 可 | ~してもよい/~される(許容・受動) |
| 将 | まさに~しようとする(意志・未来) |
例:可以學也。
→ 学ぶことができる。
「可」は補助的に使われ、「学ぶ」を可能表現にしています。
【C】特殊用法・句法で使われる動詞
これらは主に構文や文法ルールに組み込まれて使われる動詞です。
| 動詞 | 代表句法 | 意味・働き |
|---|---|---|
| 為 | 「A為B」 | AをBとする、BによってAされる(受動) |
| 見 | 「見A」 | Aに〜される(受動) |
| 使 | 「使A B」 | AにBさせる(使役) |
| 令 | 「令A B」 | AにBさせる(使役) |
例:人見之。
→ 人これを見らる(人に見られる)。
「見」は受動の働きを持つ動詞で、「〜に〜される」という受け身構文を形成します。
3. 実践的に使いこなす!動詞から読み解く漢文読解術
動詞の知識を実際の読解に活かすためには、次の3つのステップで読むと効果的です。
● ステップ①:まず動詞を探す
文を読んだときに、まず**「述語(動詞)はどこか?」**を探しましょう。送り仮名の「〜す」「〜る」がついている漢字は、動詞である可能性が高いです。
● ステップ②:主語と目的語を補う
動詞がわかったら、「誰が(主語)」「何を(目的語)」の関係を補っていきます。助詞が省略されていることもあるので、前後関係から補う読解力が必要です。
例:君子學之。
→ 君子これを学ぶ。
「學」は動詞、「之」は目的語、「君子」が主語。
● ステップ③:動詞の文法的用法を見抜く
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「見」「為」などは、単なる“意味”ではなく“構文”で見抜く
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「得」「可」「能」は後続の動詞とセットで判断する
これらをセットで判断する練習を繰り返すことで、文構造の理解が飛躍的に向上します。
4. 入試に頻出!動詞を中心に問われやすい設問タイプ
大学入試の漢文では、動詞に関する設問が多く見られます。以下に頻出のパターンを紹介します。
◆ 読みの指定・送り仮名の問題
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「この動詞の正しい送り仮名はどれか?」
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「次の動詞の読みを記せ」
→ 基本動詞と句法動詞はここで狙われます。教科書レベルの語は正確に覚えることが重要。
◆ 句法の判別問題
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「『見』の用法として正しいのはどれか?」
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「A為Bの文の訳として最も適切なものを選べ」
→ 文構造と動詞の関係を見抜く力が求められます。本文中で該当構文を見抜き、他の選択肢と比較検討できるようにしましょう。
◆ 文脈から動詞の意味を問う問題
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多義語(為・行・得・信など)の意味を文脈から正しく選ばせる
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訳出問題で、文全体の主語・目的語との関係を見抜く必要あり
→ 日頃から「なぜこの意味になるのか?」と根拠を持って読み解く習慣が大切です。
5. 動詞力を鍛える勉強法とおすすめ教材
◎ 漢文動詞ノートを作る
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覚えた動詞を、意味・例文・構文に分けて記録
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多義語は意味ごとに用例を分けて書く
→ 週に5個ずつ書きためていくだけでも、入試直前には100語を超える動詞辞典に。
◎ 句法ドリルを活用
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『漢文句法ドリル』などの教材で、「動詞+構文」パターンを反復練習
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反射的に「これは使役」「これは受動」と見抜けるようにする
◎ 実践演習では「動詞マーク法」
本文読解時に、動詞部分に赤ペンなどで印をつけていくと、構造が視覚化されて読みやすくなります。特に動詞と補語がずれていないか、直後の単語との関係を見直す習慣をつけましょう。
◆ 漢文頻出動詞一覧(入試頻出TOP20)
| 漢字 | 読み | 主な意味・用法 | 備考・句法との関係 |
|---|---|---|---|
| 為 | す/なす/ために | 行う、〜のために、〜と為す | 受動構文(A為B所C)あり |
| 見 | みる/る | 見る、〜される(受け身) | 見Aで受動 |
| 使 | つかふ/しむ | 使役(〜に…させる) | 使A B 構文 |
| 令 | れいす/しむ | 命じる、〜させる(使役) | 使A Bと同義で使役 |
| 遣 | つかはす | 派遣する、行かせる | 使役的にも使用される |
| 謂 | いふ | 言う、〜と(人)に言う | 「謂A曰〜」で頻出 |
| 曰 | いふ | 言う(簡潔な引用) | 子曰く、などで定番 |
| 能 | よくす/あたふ | 〜できる(能力) | 可能助動詞としても働く |
| 可 | べし/かす | 〜してよい、〜される | 許可・受動・可能など |
| 得 | う/える | 得る、できる、理解する | 可や能と並び可能の代表 |
| 謝 | しゃす/あやまる | 謝罪する、断る、礼を言う | 「謝絶」の語源 |
| 過 | すぐ/よぎる | 通る、過ぎる、誤る | 自他両用・行動に関わる |
| 去 | さる/のく | 去る、離れる | 空間や時間的な移動を表す |
| 死 | しす | 死ぬ | 結末・感情変化の場面で頻出 |
| 愛 | あいす | 愛する、いつくしむ | 逆説的に批判文でも登場 |
| 忍 | しのぶ/たふ | 耐える、隠す、こらえる | 感情・行動両面で用いられる |
| 忘 | わする | 忘れる | 「忘恩」「忘我」など四字熟語にも |
| 信 | しんず/まこと | 信じる、誠意、約束 | 君主と臣下、師弟関係で頻出 |
| 食 | くらふ/はむ | 食べる、養う | 饗応や飢えの描写に登場 |
| 学 | まなぶ | 学ぶ | 子曰く〜など初学者用の定番文でも |
◆ 動詞句法チェックシート(構文パターンまとめ)
| 句法名 | 形式 | 意味 | 訳出例 |
|---|---|---|---|
| 使役文(使) | 使A B(C) | AにBさせる | 「君使民作之」→君、民にこれを作らしむ |
| 使役文(令) | 令A B | AにBさせる | 「王令人説敵」→王、人に敵を説かしむ |
| 受動文(見) | 見A | Aに〜される | 「人見之」→人にこれを見らる |
| 受動文(為) | 為A所B | AにBされる | 「王為賊所殺」→王は賊に殺される |
| 判断文(為) | A為B | AはBとする/Bとなる | 「忠為義本」→忠は義の本と為す |
| 可能文(能) | 能+動詞 | 〜できる | 「能行」→行うことができる |
| 可能文(得) | 得+動詞 | 〜できる/得る | 「得見」→見ることができる |
| 許可文(可) | 可+動詞 | 〜してよい | 「可行」→行くことができる/許される |
| 否定可能(不能) | 不能+動詞 | 〜できない | 「不能忍」→耐えることができない |
| 否定受動(不得) | 不得+動詞 | 〜されない/〜できない | 「不得行」→行くことができない |
まとめ:動詞がわかれば、漢文は見える
漢文を読みこなす上で、「動詞の意味と働きを見抜く力」は不可欠です。構文も、主語や目的語の判別も、すべては動詞を軸に組み立てられています。
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単語の意味を覚えるだけでなく、「文中でどう働いているか」を考える
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主語・目的語との関係を常に意識する
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多義語・構文動詞は必ず用例とセットで確認する
このように、動詞を軸にして文を解釈する力を育てることこそが、漢文力を大きく底上げする道です。
受験本番では、難しい構文を含んだ一文を正確に読み解く力が問われます。今のうちに「動詞に強くなる」ことで、漢文を苦手科目から得点源へと変えていきましょう。


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