漢文は「日本語なのに中国語」「文語文法が混ざる」「読み下しが特殊」と、他の科目と比べてとっつきにくい印象を持たれがちです。特に高校生の中には、「文法が難しすぎて意味がわからない」と苦手意識を持っている人も少なくありません。
しかし、漢文はルールさえ理解すれば、実は非常にスッキリとした構造をしている科目です。この記事では、漢文における「難解」とされがちな文法事項をやさしく、実例つきで解説し、受験で得点源にするための具体的な勉強法も紹介します。
そもそも漢文の文法は何が難しいのか?
まず最初に、「なぜ漢文の文法が難しいと感じるのか」その正体を明確にしておきましょう。大きく分けて以下の3点が理由です。
-
語順(文構造)が日本語と違う
-
返り点・再読文字・助字のルールが特殊
-
主語が省略されやすく、意味が曖昧になりがち
つまり、慣れない形式に戸惑ってしまうだけで、実は仕組み自体はシンプルなものが多いのです。
よく出る「難解」文法①:再読文字のしくみ
● 再読文字とは?
「再読」とは、「同じ漢字を二度読む」という意味です。漢文には一定のルールに従って“2回読む”文字があります。たとえば、「未だ~ず」「将に~んとす」などがそれです。
| 再読文字 | 読み方 | 意味 | 例文(書き下し) |
|---|---|---|---|
| 未 | いま-だ~ず | まだ~ない | 未だ成功せず |
| 将 | まさ-に~んとす | 今にも~しようとする | 将に行かんとす |
| 当 | まさ-に~べし | 当然~すべきだ | 当に学ぶべし |
| 応 | まさ-に~べし | ~すべきである(当然・推量) | 応に来るべし |
● ポイント
-
再読文字は意味が決まっているので、覚えてしまえば迷いません。
-
「まさに~んとす」「いまだ~ず」のような読みを見た瞬間に意味が浮かぶようにすることが、スピードアップの鍵です。
よく出る「難解」文法②:否定形のバリエーション
漢文の否定表現にはいくつかパターンがあります。どれも「~ない」ですが、細かいニュアンスの違いが問われることがあります。
| 否定語 | 読み方 | 意味 | 特徴・例文 |
|---|---|---|---|
| 不 | ~ず | 単純な否定 | 吾行かず(私は行かない) |
| 非 | ~にあらず | 判断の否定 | 君子に非ず(君子ではない) |
| 無 | ~なし | 存在の否定 | 無人(人がいない) |
| 勿 | ~することなかれ | 禁止 | 勿れ、酒を飲むこと |
| 莫 | ~することなかれ | 禁止(やや硬い) | 莫れ、争うこと |
● ポイント
-
不=「動作を否定」
-
非=「性質や状態を否定」
-
無=「存在の否定」
この3つはよく出るので、意味だけでなく、どの文法的対象を否定しているのかを意識しましょう。
よく出る「難解」文法③:使役と受身
使役(~せしむ)や受け身(~せらる)も、漢文で混乱しやすいポイントです。主語と述語の関係が現代日本語と逆転して見えるため、苦手意識を持つ人が多くいます。
● 使役のパターン
| 文字 | 読み方 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|---|
| 使 | し-む | ~に…させる | 使人読書(人をして読書せしむ) |
| 令 | し-む | ~に…させる | 令子帰(子をして帰らしむ) |
| 教 | をし-む | 教えて~させる | 教人学(人をして学ばしむ) |
| 遣 | つか-はす | 派遣する、命じる | 遣人至(人を遣はして至らしむ) |
● 受け身のパターン
| 文字 | 読み方 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|---|
| 見 | る・らる | ~される | 見殺(殺される) |
| 被 | る・らる | ~される | 被攻(攻められる) |
| 為 | ~のために…せらる | ~によって~される | 為敵所敗(敵のために敗れらる) |
● ポイント
-
使役と受け身は「文の主語が誰か」をしっかり押さえないと混乱します。
-
主語を意識するには、敬語や語順、文脈を丁寧に読み解く力が必要です。
よく出る「難解」文法④:疑問・反語の見分け方
漢文の設問でよく出るのが「これは疑問文か、反語文か?」という判断問題です。
● 見分けのキーワードと読み方
| 漢字 | 読み方 | 疑問・反語 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 何 | なんぞ | 疑問 | なぜ |
| 豈 | あに | 反語 | あに~だろうか(いや~ない) |
| 安 | いづくんぞ・いづくにか | 疑問・反語 | どこ・どうして/いや、そんなはずない |
| 誰 | たれ | 疑問 | 誰が |
| 焉 | いづくんぞ・いづくにか | 疑問・反語 | 安と同じ(文脈で判断) |
● ポイント
-
疑問はそのまま質問している
-
反語は「答えが決まっていて、それを否定するための疑問形」
例:
-
疑問:「何ぞ学ばざる?」(なぜ学ばないのか?)
-
反語:「豈に学ばざらんや」(学ばないはずがあろうか、いや学ぶ)
効率的な文法学習法3つのステップ
ステップ1:頻出文法を「形と意味のセット」で覚える
文法書を最初からすべて覚える必要はありません。出題頻度が高い再読文字・否定・使役・受け身・疑問反語をまずはマスターしましょう。
-
例文とセットで覚える
-
ノートに自分なりの例文を作って書く
-
クイズ形式で反復する(親子で出し合うのもおすすめ)
ステップ2:短文の読み下し+現代語訳練習を繰り返す
いきなり長文を読もうとせず、まずは1〜2行程度の漢文を読み下して現代語訳する練習から始めましょう。文法の形を実際の文で見て初めて定着します。
市販の「漢文句形トレーニング」や「漢文ドリル」などを使うのも効果的です。
ステップ3:過去問で出題パターンを確認
高校受験・大学受験では、文法の知識だけで解ける設問が必ず出題されます。その出題パターンを知ることも文法攻略の一環です。過去問集や模試の問題から「文法だけで解ける設問」を集めて練習しておきましょう。
保護者の方へ:漢文文法は「努力が形になる」教科です
漢文の文法は、暗記+読解の訓練により確実に点数に直結します。特に漢文は、学年を問わず早期に始めることでアドバンテージを得やすく、短期間で成果が見えやすい教科です。
苦手意識を持たせないためにも、はじめは親子で一緒に文法クイズを出し合うなど、「遊び」の要素を取り入れるのもおすすめです。
まとめ:文法から漢文を得点源にしよう
漢文は、感覚や読解力だけでなく、「文法知識」が決め手になる教科です。一見難しそうに見える文法も、実はパターン化されていて、覚える量も限られています。
今回紹介した代表的な文法(再読文字・否定・使役受身・疑問反語)をまず押さえ、例文とセットで練習していくことで、漢文が得点源になるだけでなく、現代文や小論文にもつながる論理力が身につきます。
漢文は“わかれば楽しい”科目です。最初の壁を乗り越えれば、確かな武器になります。ぜひ、文法の力を味方につけて、受験に向けて着実な一歩を踏み出しましょう。


コメント