古文の読解において、文法知識は欠かせない要素の一つです。中でも「助動詞」は、文の意味を大きく左右する重要な存在。しかし、「似たような意味の助動詞が多くて混乱する」「どれも『過去』って言ってるけど何が違うの?」と感じている高校生も少なくありません。
今回は、古文の中でも特に重要かつ混同されやすい助動詞「き」と「けり」の違いと使い分けについて、丁寧に解説します。大学受験における文法問題だけでなく、読解問題でも得点に直結する知識です。この記事を読み終わるころには、「き」と「けり」の違いがはっきりと理解でき、実際の文章の中で自信を持って読み取れるようになるでしょう。
■ まずは基本!「き」と「けり」の意味と接続を押さえる
古文の助動詞を理解する第一歩は、「意味」と「接続(どの形に付くか)」を覚えることです。
| 助動詞 | 意味 | 接続 | 活用の種類 |
|---|---|---|---|
| き | 過去(体験) | 連用形 | 特殊型 |
| けり | 過去(伝聞)・詠嘆 | 連用形 | ラ変型 |
両者ともに「連用形」に接続しますが、その意味と使われ方には大きな違いがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
■ 「き」:自分が実際に経験したことを語る「体験の過去」
「き」は、筆者自身が実際に体験した過去の出来事を述べる際に使われます。現代語に訳すときには「~た」「~たことがある」と訳すのが一般的です。
● 例文
昔、男、ありけり。女を見て、思ひき。
→ 昔、ある男がいた。女を見て、(そのとき)思ったのだった。
このように「思った」という体験を直接述べているのが「き」の特徴です。
● ポイント
-
「筆者・語り手の体験」であることが多い
-
手紙や日記のような回想文に多く使われる
-
和歌には原則として用いられない
● 活用(特殊型)
| 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|
| 〇 | せ | き | し | しか | 〇 |
例:「せし人(以前関係があった人)」や「しかばかり(そうだっただけ)」なども試験でよく出ます。
■ 「けり」:他人から聞いた話や詠嘆に使う「伝聞の過去」
「けり」は、人から聞いた話や物語の中で知った過去の出来事を語るときに使われます。現代語では「~たそうだ」「~たということだ」と訳すのが自然です。
また、和歌や感情の強調表現では「詠嘆」の意味にもなる点がポイントです。
● 例文(伝聞の過去)
昔、竹取の翁という者ありけり。
→ 昔、竹取の翁という人がいたということだ。
これは「こういう話が伝わっているよ」と語っている文なので、「けり」が使われます。
● 例文(詠嘆)
花の色は うつりにけりな いたづらに(小野小町)
→ 花の色は、むなしく色あせてしまったのだなあ。
このように、和歌では「けり」がしばしば感動や気づきの表現に使われます。
● ポイント
-
「伝聞」や「物語内の過去」に使われる
-
和歌や感情表現では「詠嘆」となる
-
「けりな」などの形で文末に来ると詠嘆の可能性が高い
● 活用(ラ変型)
| 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|
| けら | 〇 | けり | ける | けれ | 〇 |
※未然形の「けら」は古文中に非常に少ないですが、入試では「けらし(けり+らし)」の形で問われることがあります。
■ 「き」と「けり」の見分けポイントまとめ
| 比較項目 | 「き」 | 「けり」 |
|---|---|---|
| 主な意味 | 体験の過去 | 伝聞の過去・詠嘆 |
| 使用場面 | 回想や日記など、自身の体験談 | 昔話・物語・和歌 |
| 現代語訳 | ~た/~たことがある | ~たという/~たそうだ/~たのだなあ |
| 使用されやすい表現 | せし人、しかばかり | ~けりな、~にけり |
■ 実践問題で確認しよう!
実際の入試を意識した練習問題で、「き」と「けり」の使い方を確認しましょう。
【問題1】次の文の中の「けり」はどの意味で使われているか。
世の中に、たえて桜のなかりせば、春の心はのどけからまし。咲くを見てこそ、あはれとぞ思ひける。
→ この「けり」は、
A:体験の過去 B:伝聞の過去 C:詠嘆
解答:C(詠嘆)
→ 和歌中に使われており、感動を述べる文末「けり」は詠嘆と判断します。
【問題2】「き」が使われている文の特徴として正しいものはどれか。
A:物語内の話で語り手は経験していない
B:人から聞いた話をもとにしている
C:話し手が実際に体験したことを語っている
解答:C
■ 「き」と「けり」は読解のカギになる!
古文読解では、助動詞がそのまま「文章の立場」や「視点」のヒントになります。
-
「き」=語り手が直接見聞きしたこと
-
「けり」=語り手が他者の話や出来事を伝えている
このように、「き」「けり」には単なる過去表現を超えた“視点の違い”があります。問題文の中で「誰が語っているのか」「その出来事は体験か伝聞か」を意識することで、読解力が格段に向上します。
■ まとめ:助動詞の理解が古文攻略の第一歩
助動詞「き」「けり」は、頻出かつ非常に基本的な文法項目です。しかし、その意味と使い方を深く理解することで、古文の世界がぐっと読みやすくなります。
-
「き」は体験の過去(自分が経験した)
-
「けり」は伝聞・詠嘆の過去(聞いた・感動した)
この違いをしっかり押さえたうえで、実際の文章の中で何度も確認しながら読んでいくことが、最短かつ確実なマスター法です。
ぜひ、今日からでも自分の古文のノートや問題集で「き」「けり」を見つけて、どんな意味で使われているのかを確認してみてください。「なんとなく読んでいた古文」が、「明確に意味の分かる古文」へと変わっていきます。


コメント