古文の勉強をしている高校生から、よくこんな相談を受けます。
「助動詞や敬語は完璧に覚えたのに、いざ問題になると内容がわからない」
「文法はできるのに、模試の古文の点数が安定しない」
実は、これは珍しいことではありません。むしろ、古文が苦手な生徒の多くに共通する典型的なパターンです。文法の知識自体は十分なのに、本文を読む力に結びつかない。そこには必ず“盲点”があります。本記事では、その盲点がどこにあるのか、どう克服すればよいのかを具体的に解説します。
1. 文法力だけでは古文は読めない
古文の学習でまず取り組むのは、活用や助動詞、敬語といった文法事項です。これは当然の基礎であり、欠かせません。ところが「文法さえやれば古文は読める」という考えにとらわれてしまうと、実際の文章読解で壁にぶつかります。
たとえば、
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「けり」が過去か詠嘆かは判別できる
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「給ふ」が尊敬か謙譲かもわかる
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助詞「こそ」による係り結びの結論も導ける
…にもかかわらず、物語の内容はちっとも頭に入ってこない。
なぜでしょうか?
それは「文法=翻訳ツール」だと思い込んでしまっているからです。文法の知識を持っていても、実際の文脈に当てはめて「どういう場面なのか」「登場人物が何を感じているのか」を読み取る訓練が不足していると、ただの知識の羅列で終わってしまいます。
2. 文法万能型の生徒が陥る3つの盲点
文法を覚えても古文が読めない原因は、大きく3つに整理できます。
① 単語力の不足
古文単語を軽視しているケースです。
「単語は文脈で推測すればいい」「文法をやっていれば自然にわかる」——そう考えている生徒は意外に多いのですが、これは危険です。
古文は現代日本語と似ている単語もありますが、意味が大きく異なるものも多く存在します。
例:
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「あやし」=不思議だ/身分が低い
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「おろかなり」=いい加減だ/言い尽くせない
これらを知らずに読むと、文法をいくら当てはめても全体像が見えません。
② 主語・視点の把握不足
古文で最も難しいポイントの一つが「主語の省略」です。
現代文では主語が明示されることが多いですが、古文は「誰が何をしているか」が書かれていないケースが非常に多い。
たとえば『枕草子』の一節で、清少納言が描く場面は「〜なりけり」で終わることが多いのですが、主語は書かれていません。これを「誰の行動なのか」を補いながら読まなければ、意味が取れないのです。
③ 文章構造の意識不足
文法知識を個々に使えても、文章全体の流れをつかむ力が不足していると読解が進みません。
古文は「起承転結」がはっきりしており、特に物語では「誰が→何をして→どうなったか」のストーリーラインがあります。
これを意識しないで一文ずつ逐語訳しようとすると、細部にとらわれて全体像が見えなくなってしまいます。
3. 読解力を伸ばすために必要な学習法
では、文法を覚えたあと、どのように学習すれば“読む力”がつくのでしょうか?
① 単語は「文章で」覚える
単語帳を使って暗記することも必要ですが、それ以上に効果的なのは「文章の中で出てきた単語を覚える」ことです。
模試や過去問を解いたときに知らなかった単語を必ずチェックし、辞書で意味を調べて自分のノートにまとめていきましょう。
② 主語補充の練習
文章を読んだら、各文に「これは誰が行動しているのか」を書き込みましょう。
慣れるまでは逐一メモするのがおすすめです。最初は時間がかかりますが、主語を意識する習慣がつくと文章の流れが格段にわかりやすくなります。
③ 大意把握のトレーニング
古文は一語一句を正確に訳す練習だけでは不十分です。現代語訳を意識しすぎると、返って内容理解が遅れてしまいます。
大切なのは「この段落はだいたいどういう場面なのか」をざっくりとつかむこと。つまり、現代文の読解と同じように「要点把握」をする訓練です。
4. 古文が読めるようになる学習ステップ
具体的な学習の流れをステップで示すと次のようになります。
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文法の基礎固め
助動詞・敬語・識別を完璧にする。 -
基礎単語の暗記
まずは頻出300語程度を押さえる。 -
文章読解で主語確認
一文ずつ「誰が行動しているか」を確認しながら読む。 -
全体の大意把握
一文ごとの訳よりも「場面」をつかむ練習を重視する。 -
過去問演習で応用
実際の入試問題を使って、得点につながる力を養う。
この流れを踏めば、「文法はできるけれど読めない」という状態から着実に抜け出すことができます。
5. 保護者の方へ:古文が伸びないときのチェックポイント
もしお子さんが「文法はやっているのに点数が伸びない」と悩んでいるなら、次の3つを確認してみてください。
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単語暗記はおろそかになっていないか
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主語を意識して読んでいるか
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大意を把握する習慣がついているか
これらができていなければ、どれだけ文法知識を増やしても成果は出ません。逆に言えば、この3点を補うだけで一気に得点力は上がります。
まとめ
「文法はできるのに古文が読めない」——その原因は文法力の不足ではなく、単語力・主語把握・大意把握の3つに盲点があるからです。
文法はあくまで基礎にすぎません。
そこに「単語力」「読解力」を組み合わせることで初めて古文は“読める”ようになります。
古文に苦手意識を持つ生徒さんにこそ、この視点を押さえて学習してほしいと思います。そして保護者の方も、「うちの子は文法だけで満足していないか」を見守ってあげるとよいでしょう。


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