【古文】古文の登場人物の性格や役割を整理する

古文・漢文の勉強法

古文が苦手な高校生の多くが共通してつまずくのが、「登場人物の気持ちや性格がつかめない」「誰が何をしているのかわからない」という点です。
現代文なら人物の行動や心理描写をそのまま理解できますが、古文は言葉や文化の違いがあるため、登場人物の感情や立場をつかむのが難しく感じられます。

しかし、実は古文の登場人物には“典型的なパターン”があります。時代背景や身分制度、当時の価値観を踏まえて読めば、人物の性格や行動の意図は明確に整理できるのです。
この記事では、古文読解の基礎である「登場人物の性格と役割」を体系的に整理し、読解問題や入試問題で得点に直結させる方法を解説します。


1.なぜ人物理解が古文読解のカギなのか

古文読解で得点差がつくのは、語彙力よりも「登場人物の立場理解」にあります。
なぜなら、古文の物語は人間関係を軸に展開するからです。
特に『源氏物語』や『伊勢物語』などの王朝文学、『大鏡』『今昔物語集』などの説話文学では、登場人物の身分・性別・立場によって、感情表現や行動の意味がまったく異なります。

たとえば、「女のもとに通う男」が登場したとき、その行動の評価は現代とは違います。
当時の貴族社会では、「夜に女性のもとへ通う=恋愛の常識」であり、これをもとに物語が進みます。
こうした文化的前提を知らずに読んでしまうと、「なぜこの人はこんな行動をとるの?」と混乱してしまうのです。

つまり、古文の登場人物を「当時の価値観の中でどう振る舞うか」という視点で整理することが、理解の第一歩です。


2.人物の分類を意識して読む ― 立場と役割で整理する

古文では、登場人物の「性格」を直接的に描写することは少なく、行動や会話、周囲の反応を通して性格を読み取るのが基本です。
その際に有効なのが、人物を次の4つのカテゴリーに分けて整理することです。

① 主人公(中心人物)

物語を動かす存在で、恋愛・出世・修行など、テーマの軸になる人物。
多くの場合、感情が繊細で、理想を追い求める性格として描かれます。
『源氏物語』の光源氏、『伊勢物語』の在原業平などが典型です。
主人公は必ずしも「正しい」わけではありませんが、読者が共感しやすいように心理描写が丁寧になされています。

読解のポイント:
・主人公の「行動理由」と「感情変化」に注目する。
・「〜と思ひけり」「〜となん」など、心理描写の助詞や助動詞をマークする。

② 対立・補助人物(周辺人物)

主人公と恋愛・友情・政治などで関わる人物。
多くの場合、「主人公の内面を映す鏡」として配置されます。
たとえば、光源氏の周囲にはさまざまな女性が登場しますが、彼女たちは源氏の恋愛観・人生観を際立たせるための存在です。
対立人物が登場したら、「この人物の立場は主人公とどう違うか」を整理することで、物語の主題が明確になります。

読解のポイント:
・人物どうしの“立場の差”に注目(身分・年齢・性別)。
・「〜を恨む」「〜にうらやむ」などの表現は感情の対比を示すサイン。

③ 作者の代理(語り手・僧侶・老人など)

説話や日記文学では、登場人物の一人が作者の考えを代弁している場合があります。
『徒然草』や『方丈記』などでは、「無常観」や「出家思想」を語る老人・僧侶が登場し、その人物が物語のメッセージを代わりに伝えます。
このタイプの人物は、「経験豊か・客観的・冷静」という性格で描かれ、他の登場人物を導く役割を担います。

読解のポイント:
・登場人物の言葉に「教訓」「悟り」が含まれているかを確認。
・“〜べし”“〜まじ”などの断定表現が出てきたら思想的な主張を疑う。

④ 象徴的存在(神・動物・自然現象など)

古文では、人間以外の存在も登場人物のように扱われます。
たとえば『竹取物語』の月、『今昔物語集』の仏や鬼などです。
こうした存在はしばしば「人間の欲望」「無常」「因果応報」を象徴しています。
古文の世界では、自然や神仏が人間の心を映す鏡として描かれるのです。

読解のポイント:
・非現実的存在が登場したら「何を象徴しているか」を考える。
・登場直後や別れの場面に注目し、物語の転換点を見抜く。


3.性格を読み解く3つのキーワード

登場人物の性格を判断する際に注目すべき表現を、3つの観点から整理しておきましょう。

① 感情語

古文では心理描写が「動詞」や「形容詞」で表されます。
たとえば「かなし」「うし」「ありがたし」「あはれなり」など。
現代語の感覚で読むと誤解することも多いので、古文特有の意味で理解することが重要です。

例:
・「かなし」=愛しい、かわいい(悲しいではない)
・「うし」=つらい、いやだ
・「ありがたし」=めったにない、貴重だ

感情語は人物の心理を直接示すため、マークしておくと心情問題に強くなります。

② 敬語

敬語は人物の関係性を示す最大のヒントです。
「尊敬語」=目上に使う → 相手が上位。
「謙譲語」=自分を下げる → 話し手が下位。
敬語の方向がわかると、人間関係の構図が整理できます。

特に恋愛物語では、敬語の使い方から男女の距離感を読み取れます。
たとえば、初期は尊敬語・謙譲語で話していた男女が、のちに敬語を使わなくなるのは「親密化」を意味します。

③ 心情の変化を示す助詞・助動詞

「こそ〜已然形」「〜ば」「〜ども」などの接続助詞は、感情の転換を表すサイン。
また「けり」「なり」などの助動詞も心理の描写と関係があります。
たとえば「〜と見えけり」は、語り手が“その場面を振り返っている”という時間のズレを示し、登場人物の感情が過去形で整理されていることを意味します。


4.人物整理ノートの作り方 ― 模試や過去問の活用法

登場人物の性格や役割を整理する力は、読解演習を通して育てることができます。
効果的なのが、「人物整理ノート」を作る方法です。

手順

  1. 作品名と登場人物を一覧化
     → 人物名・関係・性格・立場を簡潔にまとめる。

  2. 重要な描写を抜き出す
     → 「どんな場面でどう行動したか」を引用する。

  3. 作者の評価を推測する
     → 結末でどう扱われたか(幸・不幸・報い)から読み取る。

たとえば『伊勢物語』なら、在原業平の「恋愛に生きるが、理想と現実の間で苦しむ姿」を中心に、相手の女性たちの立場を整理します。
こうしたノートを作ることで、同じモチーフ(恋・出家・無常など)の作品を横断的に理解でき、入試問題の初見文にも対応しやすくなります。


5.人物把握を深めるための3つの読解トレーニング

① 物語の「関係図」を自分で描く

文章を読んだあと、人物の関係を図にして整理してみましょう。
「誰が誰を思っているか」「誰が誰に仕えているか」を線でつなぐだけでも理解が進みます。

② 「性格を一言で表す」練習をする

登場人物を読んだら、「この人は○○な人」と一言でまとめてみる。
「素直」「慎み深い」「身分意識が強い」など、抽象的でも構いません。
一言で言い表す力が、記述問題での人物説明力に直結します。

③ 作品間で共通点を探す

『源氏物語』の女三の宮と、『更級日記』の作者のように、立場や価値観が似ている人物を比較してみる。
同時代の女性像・男性像を整理することで、古文の世界観が立体的に見えてきます。


6.まとめ ― 登場人物を「文化の中の人」として読む

古文の登場人物を理解するうえで最も大切なのは、現代的な感覚で判断しないことです。
当時の価値観・身分制度・男女のあり方を踏まえたうえで、「この人物はどんな社会的制約の中で行動しているか」を考えることが、真の読解につながります。

  • 登場人物は立場・身分・性別で整理する

  • 感情語・敬語・助詞の使い方に注目する

  • 人物関係を図やノートで整理し、繰り返し確認する

こうした積み重ねが、古文の“読みの深さ”を支えます。
人物理解ができるようになると、物語の展開が自然と頭に入り、記述問題や読解設問でも「理由をもって説明できる」ようになります。

古文は、千年前の人々の心を現代に読み解く“人間理解の教科”です。
登場人物の心を整理することで、文章が生き生きと動き出し、あなたの古文力も確実に伸びていくでしょう。

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