漢文は、高校生にとって「なんとなく苦手」と感じる科目の代表格です。
理由はシンプルで、現代日本語と語順も文法もまるで違うからです。英語のように体系的に文法を教わる機会も少なく、「なんとなく返り点で訳す」という感覚で勉強している人が多いのではないでしょうか。
しかし、漢文の文法は実はそれほど複雑ではありません。基本のルールをしっかり押さえれば、読解のスピードも正確さも格段にアップします。今回は、漢文の「難しい文法」をやさしく整理し、誰でも理解できるように解説していきます。
1.漢文の文法とは?「語順」と「訳し方」のルールを知る
まず大前提として、漢文は中国語をもとにした古い文体です。語順は基本的に「主語+述語+目的語(SVO)」であり、日本語の「主語+目的語+述語(SOV)」とは異なります。
そのため、文法を理解しないと意味を正確に読み取ることができません。
▼ 例文
君我を愛す。
日本語の語順に直せば「君は我を愛す」=「あなたは私を愛する」です。
このように、語順の違いを意識しながら読み下すことが漢文文法の基本です。
2.「返り点」だけに頼らない!漢文文法の根本理解
多くの高校生が「レ点」や「一二点」を覚えることに時間をかけます。もちろん必要ですが、返り点はあくまで“補助ツール”です。
大切なのは、「なぜそのように読むのか」という文法の構造を理解することです。
たとえば次の文を見てみましょう。
学而時習之、不亦説乎。
(学びて時にこれを習ふ、またよろこばしからずや。)
この文には返り点がありますが、構造を見抜くと次のようになります。
-
主語:「人」(省略されている)
-
述語:「説(よろこぶ)」
-
接続表現:「而」「乎」
-
内容:「学び、復習することは、喜びではないか」
返り点に頼らなくても、文の流れを理解できるようになります。
3.漢文でつまずく代表的な文法① 使役・受身
使役文
「~に…させる」という意味を表すのが使役文です。
形
-
A使B~ (A、Bをして~しむ)
-
A令B~ (A、Bをして~しむ)
-
A教B~ (A、Bに教へて~せしむ)
例文
君使臣行。
(君、臣をして行かしむ)=君が家臣を行かせる。
つまり、「使」や「令」が出てきたら「~に…させる」と読む、と覚えておくと良いです。
受身文
「~に…される」という意味を表します。
形
-
A為B所~(A、Bの~する所と為る)
-
A見B~(A、Bに~せらる)
例文
我為人笑。
(我、人に笑はる)=私は人に笑われる。
受身文は「為」「見」「被」などが合図になります。
4.漢文でつまずく代表的な文法② 疑問・反語
入試漢文で頻出なのが「疑問」「反語」の文法です。
どちらも「助字(助詞)」で見分けます。
疑問
「~か?」と問う形です。
| 助字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 乎(か) | 疑問・反語 | 汝誰乎(なんぢたれぞ) |
| 何(なん) | 何・なに | 何為(なんすれぞ)=なぜ |
| 安(いづく) | どこ | 安在(いづくにかあらん)=どこにあるか |
反語
「~か、いや、~ない」という意味です。疑問形に見せかけて否定する表現です。
| 助字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 豈(あに) | どうして~か(いや~ない) | 豈不知(あにしらざらんや)=どうして知らないことがあろうか、いや知っている。 |
| 何(なん) | どうして~か(いや~ない) | 何為不行(なんすれぞゆかざる)=なぜ行かないのか、いや行くべきだ。 |
疑問・反語の区別は、文脈から「本当に問いかけているのか」「強調のための否定なのか」で見抜くのがコツです。
5.漢文でつまずく代表的な文法③ 否定
否定文は助字がポイントです。英語の “not” にあたる言葉が複数あります。
| 助字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 不(~ず) | 直接否定 | 不行(ゆかず) |
| 非(~にあらず) | 判断の否定 | 我非子(われしならず) |
| 勿(~することなかれ) | 禁止 | 勿行(ゆくことなかれ) |
| 無(~なし) | 存在の否定 | 無人(ひとなし) |
とくに「不」と「非」は混同しやすいですが、
-
「不」=動作を否定
-
「非」=性質・判断を否定
と覚えると整理しやすいです。
6.頻出の構文を押さえると読解が一気に楽になる
文法がある程度わかってきたら、次は「構文」を覚えましょう。
構文とは「意味が決まった文型」のことです。以下は頻出のものです。
| 構文 | 意味 | 読み方 |
|---|---|---|
| A不如B | AはBに如かず | AはBに及ばない |
| 若~ | もし~ば | 仮定条件 |
| 雖~ | ~といへども | 逆接 |
| 無~不… | ~として…せざるはなし | すべて~する |
| 不可~ | ~すべからず | ~してはいけない/~できない |
構文を知っているだけで、文全体の意味をすぐにつかめるようになります。
7.文法を理解するための効果的な勉強法
漢文の文法を覚えるには「声に出して読む」ことがいちばんです。
読むたびに語順や助字の働きを体で覚えられます。
効果的な学習ステップ
-
教科書や参考書の例文を音読する
→ 読み下し文と意味を同時に意識。 -
助字ごとにノートを作る
→ 「不=否定」「而=順接」「乎=疑問」など、品詞ごとに整理。 -
短文暗唱で構文を定着
→ 「無不~」「A不如B」などは声に出して覚えると忘れない。
特におすすめは、学校で習った本文の中から助字を拾い出して「文法ノート」を作る方法です。
例文を自分の言葉で書き換えることで、文法の本質を理解できます。
8.保護者の方へのアドバイス
漢文は、暗記中心に見えて「論理的思考」を鍛える教科でもあります。
主語と述語の関係、因果のつながり、否定と肯定の区別など、文法の理解を通して“読む力”が総合的に育ちます。
漢文が得意になると、現代文や英語の構文理解にも良い影響を与える生徒が多いです。
そのため、保護者の方は「暗記科目だから大変そう」と思うのではなく、
「論理的に考える練習の場」として漢文を支えてあげるとよいでしょう。
9.まとめ:漢文文法のコツは「助字」と「構文」
漢文の文法を難しく感じるのは、「構造を意識していないから」です。
文法の基本は次の3つ。
-
語順のルール(SVO)を意識する
-
助字の働きを整理して覚える
-
よく出る構文を声に出して定着させる
この3点を意識して練習を続ければ、漢文は確実に「読める」ようになります。
返り点に頼らず自力で文の流れを理解できるようになれば、共通テスト・入試問題でも高得点を狙えるでしょう。
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