小論文の課題に向き合うとき、「何を書けばいいかわからない」「自分の意見が浅く感じる」と悩む受験生は少なくありません。特に大学入試の小論文では、与えられたテーマについて“自分の考えを筋道立てて展開する力”が問われます。
しかし、多くの受験生は「論点を掘り下げる」という作業を十分に行わないまま、表面的な意見にとどまってしまいます。
たとえば「AIと人間の共存」というテーマで、「AIは便利だから活用すべきだ」とだけ書いてしまうと、単なる感想文に近くなってしまいます。
では、どうすれば“説得力のある小論文”にすることができるのでしょうか。
鍵となるのが「論点の掘り下げ方」です。
この記事では、小論文を書く前に必ず行いたい論点整理と掘り下げの手順を、実例を交えて解説していきます。
1.「論点を掘り下げる」とは何をすることか
まず、「掘り下げる」という言葉の意味を明確にしておきましょう。
論点を掘り下げるとは、テーマを単なる表面的な意見で終わらせず、「なぜそう思うのか」「その背景には何があるのか」「別の立場から見たらどうか」と考えを深めることを指します。
つまり、論点の掘り下げは「思考の立体化」です。
テーマを平面的に見るのではなく、背景・原因・影響・対立構造など、複数の角度から分析することで、文章に厚みと説得力が生まれます。
2.論点を掘り下げるための基本ステップ
論点の掘り下げは、「思いついた意見をそのまま書く」ことではなく、以下の4つのステップで段階的に行うのが効果的です。
ステップ① テーマの意味を正確に理解する
まず、課題文や設問に出てくるキーワードを丁寧に分析しましょう。
たとえば「教育の平等」「持続可能な社会」「命の尊厳」といった抽象的な語句は、そのままでは漠然としています。
このとき、「その言葉は具体的に何を指すのか」を自分の言葉で言い換えることが大切です。
例:
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「教育の平等」=すべての子どもが家庭環境にかかわらず、学ぶ機会を得られること
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「持続可能な社会」=将来の世代の利益を損なわずに、現在の生活を維持する社会
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「命の尊厳」=人間の命を物や数字のように扱わず、かけがえのないものとして尊重すること
この「言い換え」を行うだけで、テーマが具体的になり、論点の方向性が見えやすくなります。
ステップ② 「なぜそう言えるのか」を問い返す
次に、自分の意見を一度立ててみましょう。
たとえば「教育の平等は重要だ」と考えたとします。
ここで終わってしまうと表面的です。掘り下げの第一歩は、「なぜそう言えるのか?」と自分に問い返すことです。
例:
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なぜ教育の平等が大切なのか?
→ 教育の機会が不平等だと、将来の職業選択や社会的地位に差が生まれるから。 -
ではなぜその差が問題なのか?
→ 個人の努力だけでは埋められない格差が広がり、社会全体の活力を失うから。
このように、「なぜ?」を2〜3回くり返すと、意見の根拠が具体的になり、論理の骨格が明確になります。
ステップ③ 「反対の立場」を一度考えてみる
掘り下げを深めるうえで欠かせないのが、「反対意見を想定する」ことです。
小論文は一方的な主張ではなく、「他者の考えを踏まえて自分の意見を打ち出す」ことが評価されます。
たとえば「教育の平等を重視すべきだ」という主張に対して、反対の立場を考えてみます。
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「努力の差まで平等に扱うのは不公平だ」
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「公的支援よりも、個人の責任を重んじるべきだ」
このように反対意見を考えることで、自分の主張の弱点や、補強すべき論理が見えてきます。
そして、「確かに〜という考えもあるが、それでも私は〜と考える」という形で反論を組み込むと、文章に説得力が生まれます。
ステップ④ 「具体例」で抽象を支える
掘り下げた論点を実際の文章に落とし込むときに欠かせないのが「具体例」です。
抽象的な主張だけでは、読む側は「本当にそうなのか?」と納得できません。
具体例は次の3種類を意識すると効果的です。
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社会的な例:ニュース、統計、政策など
例:「文部科学省の調査によると、家庭の所得と学力には強い相関がある」 -
身近な例:学校生活、部活動、アルバイト経験など
例:「学校でのICT活用は、家庭にパソコンがあるかどうかで理解度に差が出る」 -
歴史的・文学的な例:過去の出来事や著名な人物の言葉
例:「戦後の教育改革では、すべての子どもに義務教育を保障することが重視された」
抽象(主張)+具体(例)のセットで書くと、文章がぐっと引き締まります。
3.論点を掘り下げる「思考トレーニング」
論点の掘り下げは、いきなり本番でできるものではありません。
日常的に思考を広げる練習をしておくことで、どんなテーマにも対応できるようになります。
(1)「なぜ」「つまり」「たとえば」で考える習慣を持つ
ニュースや授業で出てきた話題を聞いたときに、
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「なぜこうなったのか」
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「つまりどういうことか」
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「たとえば、他の例はないか」
と自分に問いかけてみましょう。
これを繰り返すことで、自然と“論点を深めるクセ”がつきます。
(2)新聞や社説の「主張と理由」を分けて読む
新聞の社説や解説記事には、必ず「主張」と「根拠」が書かれています。
「筆者は何を言いたいのか」「それを支える根拠は何か」を意識して読むと、自分が小論文を書くときの構成力が高まります。
(3)他人の意見に「もう一歩」踏み込んで考える
友人や家族と話しているときも、意見を聞いて「そうだね」で終わらせず、
「どうしてそう思うの?」「それって他の場面でも言えるかな?」と質問してみましょう。
この“対話型の思考”が、小論文の論点整理にも役立ちます。
4.掘り下げがうまくいかないときの3つの原因
論点を掘り下げられない受験生には、次のような共通点があります。
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テーマを表面的にしか理解していない
→ 抽象語を自分の言葉で定義していない。 -
意見が感情的で根拠がない
→ 「〜と思う」「〜は良くない」だけで終わる。 -
反対意見を考えていない
→ 一方的な主張になり、論理のバランスが悪くなる。
この3つを意識的に避けるだけでも、文章の質は大きく向上します。
5.保護者ができるサポートのコツ
小論文の思考力は、日常の対話の中でも育てることができます。
保護者の方は、次のような質問をお子さんに投げかけてみてください。
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「どうしてそう思ったの?」
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「他の人が見たらどう感じるかな?」
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「その意見を裏づける理由はある?」
これらの質問は、子どもの考えを「掘り下げる訓練」になります。
批判ではなく、“考えるきっかけ”を与える質問をするのがポイントです。
6.まとめ:「深さ」が小論文の決め手になる
小論文は、文章力の勝負ではなく「思考の深さ」の勝負です。
難しい言葉を使う必要はありません。
大切なのは、「なぜそう言えるのか」「反対の立場ではどうか」「それを裏づける具体例は何か」という3点を意識して書くこと。
論点を掘り下げる習慣がつけば、どんなテーマでも自信をもって書けるようになります。
そして、その思考力こそが、大学入試の小論文だけでなく、入学後のレポートや将来の社会生活でも大きな武器になります。


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