漢文の勉強を進めるうえで、「知識を覚えているはずなのに解けない」「読み下しに時間がかかって本文の意味がつかめない」という悩みは、多くの受験生が共通して抱えています。漢文は語彙暗記や句法理解など“覚えるべき内容”がはっきりしている一方で、問題文に合わせてどう運用するかという“型”を身につけないと得点に結びつきません。
漢文の問題には、必ずと言ってよいほど決まったパターンがあります。この記事では、入試漢文の読解で特に頻出の「基本パターン」を整理し、それをどう学習に組み込むかについて徹底的に解説します。
■漢文読解の基本は「パターン認識」
漢文の試験問題は、現代文のように文章全体の論理展開をつかむ問題よりも、「定型的な文構造・句法・返り点の処理」を素早く行い、意味を押さえることが中心です。
つまり、漢文は“パターンで読む”科目です。
問題文を読むたびにゼロから解釈していては、スピードも精度も上がりません。一定の規則や特徴を見抜くほど、短時間で正確に読めるようになります。
以下では、入試で特に重要な「基本パターン」を5つに分けて説明します。
【パターン1】「主語が省略されている」ケースをどう補うか
漢文では主語がほとんどの場合省略されます。これを補う力が弱いと、読み下しはできても意味がつかめません。
●主語を補う際の典型パターン
①直前の人物が主語になるパターン
物語文や史伝文では、人物が登場したあと、その人物が主語として文が続くことが多い。
②故事の主人公が主語になるパターン
蘇軾・孔子・孟子・荘子など、有名思想家や賢人が登場している場合、主語が省略されても基本的にはその人物が主語になる。
③一般論(人々・世の人)が主語になるパターン
哲学文・思想文では、抽象的な説明が続くため「人」が主語として補われるケースが多い。
●主語補充のトレーニング方法
・文章を読んだら、必ず「この文の主語は誰か?」を自分で説明する
・主語を補って短い現代語訳をつくる
・人物名や場面転換に線を引いて構造を見える化
【パターン2】「述語(動詞)」が文章の中心にある
漢文では、述語が文章の中心です。ただし、文章中に複数の動詞が登場する場合、それぞれの役割を見抜かないと文全体の構造がつかめません。
●よくある述語の構造パターン
①AはBに~す(A、Bニ~ス)
使役・授与・対比などの基本構造。人物関係の把握が第一。
②AはBを~と為す(AヲBトナス)
「~とする」という評価系の文章。思想文で頻出。
③(Aニ)Bを以てす(Bヲもってす)
「Bを用いてAにおこなう」。方法や手段の説明でよく使われる。
●述語トレーニング
・動詞を丸で囲む
・述語の意味を単語レベルで覚えるのではなく「構造」とセットで覚える
・「AはBに~す」のように図式化して整理する
【パターン3】「重要句法」=文章の骨組み
入試で必ず出るのが句法問題。句法は「覚える」だけでなく、「出た瞬間に意味と役割が確定できる」状態にしておくことが大切です。
●特に頻出の句法例
・使役(令・使・教・遣)
「~に…させる」。主語関係の把握がカギ。
・再読文字(未・将・当・須など)
時間的な意味・義務・推量などを適切に読み分ける。
・否定(不・無・勿)
「不=単純否定」「無=存在否定」「勿=禁止」など細かい違いを理解する。
・仮定・逆接(雖・若・苟・雖然など)
文脈の論理展開を決める大事な要素。
●句法学習のおすすめ手順
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書き下し文にしたときの語順を口に出して覚える
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意味だけでなく「文中でどんな役割を果たしているか」を意識する
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同じ句法が出た文章を複数解き、使い方を比較する
【パターン4】「返り点の処理」で意味が決まる
返り点(レ点・一二点など)は、漢文の語順を大幅に変えるため、正確に処理できるかが読解の大きなポイントです。
●返り点処理の基本ルール
・レ点は“1回だけ戻る”
・一・二点は“順番に戻る”
・送り仮名は“返らない”
返り点を読み間違えると、主語と述語の関係が逆転したり、意味が大きくずれたりします。
●返り点トレーニング
・返り点を無視して「語の意味」だけで読もうとしない
・書き下し文に自分の手で直してみる
・短文の返り点問題を繰り返し解き、読む速度を上げる
【パターン5】「典型展開」を知っておくと読解が速くなる
漢文には、よくある展開パターンがあります。物語的展開や思想的展開を知ることで、次に何が来るかを予測できるようになります。
●パターン例
①賢者が登場し、凡人を諭す構造
孔子・孟子の思想文に多い。
前半=問題提示、後半=解決や教訓
②過去の出来事をふまえて教訓を述べる
史記など史書で頻出。
事例 → 評価 → 教訓
③自然現象を用いた比喩
荘子・列子など老荘思想に多い。
抽象概念を自然に置き換える展開がよくある。
●展開予測トレーニング
・読解後に「この文章の構造はどの型だったか?」と分類する
・同じ思想家の文章を複数読む
・教科書レベルの文章で展開の流れを把握する
■漢文問題の基本パターンを身につける学習ステップ
ここからは、受験生が実際に勉強に取り入れやすい「学習ステップ」を紹介します。
①短文でパターン認識を鍛える
いきなり長文を読むのではなく、1〜3行の短文で「主語」「述語」「句法」「返り点」の確認を行うことが大切です。
短文は構造が単純なので、パターンを意識しやすい。
②句法と文構造をセットで覚える
句法ごとに例文を複数読むことで、文章の中でどう働いているかを自然と理解できます。
単独の暗記ではなく、「運用」を中心に学習すること。
③書き下し文を自分の手でつくる
書き下しは面倒に感じるかもしれませんが、構造把握の最強トレーニングです。
書き下し文が作れる=返り点が読める・語順が整理できる・主語補充ができる、という熟練度の証拠。
④過去問でパターンの「実戦運用」をチェック
実戦問題では、
・句法
・返り点
・主語補充
・文脈展開
が複合的に絡みます。
最初は時間がかかっても、パターンに沿って丁寧に確認しましょう。
⑤同じパターンの文章を複数解く
「同じ句法が続く」「同じ展開をする文章が多い」など、漢文はパターン練習の効果が特に高い科目です。
単元別問題集を使い、テーマごとにまとめて練習するのが効果的です。
■保護者の方へ:漢文は“短期間で伸びる科目”
漢文は暗記量が限られ、構造が明確な科目なので、正しく取り組めば短期間で点数が上がります。
特に以下のような状況で効果が出やすい科目です。
・現代文が苦手で国語の得点が伸び悩んでいる
・他科目に時間を割きたい
・共通テストで国語の配点を安定させたい
漢文の点数が安定すると、国語全体の得点も底上げされ、受験全体のバランスが整います。
■まとめ
漢文の問題には、決まった「基本パターン」があります。
主語・述語の補完、句法処理、返り点処理、文章展開の予測など、いずれもパターンを知っているか否かで大きく差がつきます。
漢文は“型を覚えて使う”科目。
型を覚えれば、読む速度も精度も上がり、安定して得点できるようになります。
パターン理解を中心に学習を進め、効率的に得点力を伸ばしていきましょう。


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