小論文を書くうえで、最も多くの受験生がつまずくポイントの一つが「自分の意見と反対意見をどう扱うか」です。
入試の小論文では、単に自分の考えを述べるだけでは不十分で、「他者の考え」と向き合いながら、論理的に一つの立場を構築できるかが問われます。これは大学での学問にも直結する姿勢であり、思考の柔軟さと深さを示すための重要なテクニックです。
しかし、実際の答案を見ると、
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反対意見を全く書かない
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反対意見を「形だけ触れて終わり」にする
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反対意見と自分の主張のつながりが弱い
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反対意見を否定する根拠が浅い
といった問題が多く見られます。
そこで本記事では、初学者でも使いやすい「対比の型」を具体例とともに紹介し、どのように反対意見を組み込み、どうやって自分の主張を論理的に強化していくのかを丁寧に解説します。
■ なぜ小論文に「反対意見」が必要なのか
小論文は「正解のあるテスト」ではなく、「正当性のある主張」を作り上げる試験です。
そのためには、自分の意見の弱点を理解し、他者の立場を想定し、それでもなお自分の主張が妥当であることを説明する必要があります。
反対意見を適切に扱えると、次の効果があります。
① 主張の説得力が上がる
反対意見を踏まえたうえで結論を述べることで、「単なる思いつきではない」ことを示せます。
② 視野が広いことを示せる
社会問題・教育問題などは多様な立場が存在します。複数の視点を踏まえる能力は、大学の評価ポイントです。
③ 思考のバランスが良いと判断される
賛成か反対か極端に偏る文章は、感情的だと評価されることがあります。
バランスよく議論を組み立てられる受験生は、学力・思考力ともに高く評価されます。
■ 最も使いやすい構成「スリー・ステップ対比法」
小論文に慣れていない人でも使える型として、次の3ステップの構成をおすすめします。
① 反対意見を提示する(理解を示す)
ここでは否定しません。「なぜそう主張する人がいるのか」を丁寧に書きます。
例:
「確かに、〜という観点から、〜と考える意見がある。」
ポイントは「一度、相手の立場に立って書く」ことです。
② 自分の意見を提示する(立場を示す)
反対意見を理解したうえで、「しかし私は〜と考える」と主張を切り替えます。
例:
「しかし私は、〜という理由から、この意見には賛成できない。」
ここで大切なのは、「ステップ①の反対意見」に対応する形で主張を書くこと。
関係のない内容を書くと論旨がぼやけてしまいます。
③ 自分の意見を支える根拠を複数提示する
根拠は少なくとも2つ。
分類としては次のどれかを入れると書きやすくなります。
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具体例(例:学校現場の状況、身近な経験)
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一般論(例:心理学的観点、社会的背景)
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データ的視点(例:高齢化、ICT化などの社会状況)
この3つのいずれかを使うと論理が太くなり、説得力が大幅に上がります。
■ 実際の文章例
テーマ:
「部活動の地域移行に賛成か反対か」
反対意見(理解)
「確かに、部活動を地域に移行することで、教師の負担軽減につながるという意見がある。現状、多くの教師が長時間の部活動指導により疲弊しているため、この指摘には一定の妥当性がある。」
自分の意見(立場)
「しかし私は、地域移行には慎重であるべきだと考える。」
根拠
「第一に、地域の人材確保が困難である。地方では、指導者が見つからず、結果として部活動が縮小・消滅する可能性が高い。
第二に、指導者の質の統一が難しい。教育現場での指導は、技術だけでなく、安全管理や生徒理解が欠かせない。しかし地域主体になると、これらの点が十分に担保されない恐れがある。」
このように対比させると、文章に「深み」と「論理性」が生まれます。
■ やってはいけない書き方
反対意見を扱う際、次のようなミスが多く見られます。
✕ 反対意見を感情的に否定する
「しかし、この意見は間違っていると思う。」
→根拠を示さない否定は、評価されません。
✕ 反対意見が浅い・短すぎる
「反対意見もある。」
→なぜそう考える人がいるのかを説明しましょう。
✕ 反対意見→自分の意見のつながりが弱い
論点が違うと「読みにくい文章」になります。
✕ 反対意見を書きすぎて主張が弱くなる
反対意見の理解は必要ですが、「主張の軸」を必ず中心におくこと。
■ 「対比の質」を高める具体的技術
次の3つを意識すると、対比の精度が一気に上がります。
① 対比するポイントを「一つ」に絞る
論点が多いと文章が散らかります。
例:
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教育効果
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教員の負担
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経済的負担
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地域格差
これらを全部扱うと焦点がぼけます。
「今回は教育効果に絞る」など、論点を一つ決めるのがコツです。
② 反対意見の「良い部分」を認める
ただ否定するよりも、部分的に肯定した方が説得力が増します。
例:
「負担軽減という点では有効だが、教育の安定性という観点では課題が残る。」
このように、反対意見の中に含まれる「価値」を拾うと、文章に深みが出ます。
③ 自分の意見を「長期的・本質的な視点」で語る
反対意見は短期的・実務的な視点になりがちです。
そこで、自分の意見は長期的・本質的な視点で述べると対比が綺麗にまとまります。
例:
「短期的には〜が可能だが、長期的に見ると〜という問題が生じる。」
大学教員が最も評価するのは「長期的視点」です。
■ 書いたあとのチェックポイント
以下のチェック項目を満たしていれば、対比の精度は十分です。
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反対意見は理由付きで書かれているか
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自分の意見は反対意見に対応しているか
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根拠は2つ以上あるか
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感情的な表現が紛れ込んでいないか
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文全体が「問題→対比→結論」の流れになっているか
これらを意識すれば、文章の質は確実に上がります。
■ まとめ
自分の意見と反対意見を適切に対比させることは、小論文の質を大きく左右します。特に大学入試では、論理的な思考力・多面的な視点・問題解決への姿勢が求められるため、このテクニックはほぼ必須です。
今回紹介した「スリー・ステップ対比法」は、ほとんどの小論文テーマで使える基本の型です。反対意見を丁寧に理解し、根拠に基づいて自分の立場を組み立てることで、主張の説得力は驚くほど高まります。
小論文はセンスではなく「技術」で書ける科目です。正しい書き方を身につけ、答案の完成度を一段階引き上げていきましょう。


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