【古文】古文の助動詞「らむ」「べし」の使い方をマスターする:読解の曖昧さを断ち切る確実な理解法

古文・漢文の勉強法

大学受験の古文読解において、多くの受験生が苦手に感じるのが、「心情・推量の把握」です。古文は、現代文のように筆者の気持ちや状況を直接的に説明しないことが多く、読者は助動詞や文脈から状況を推測する必要があります。

その中でも、特に重要でありながら、意味の幅が広いために解釈が曖昧になりがちなのが、推量の助動詞「らむ」「べし」です。この二つの助動詞をマスターすることは、読解の曖昧さを断ち切り、作者や登場人物の心情、あるいは物語の背景にある状況を正確に把握するために不可欠です。

この記事では、「らむ」と「べし」が持つ多様な意味を体系的に整理し、入試問題で正しく解釈するための具体的な判別法と、読解力を劇的に向上させるための訓練法を徹底的に解説します。


💡 1. 助動詞「らむ」の核心:今、まさに「想像」する

助動詞「らむ」は、現代語の「〜だろう」「〜ているだろう」に近い意味を持ちますが、その核心は「現在の状況に対する推量・想像」です。

接続は「終止形」(ラ変型には連体形)に接続します。

【「らむ」の4つの主要な意味】

「らむ」は、古文では主に以下の4つの意味に分類されます。特に「現在の様子」と「原因推量」は、入試での頻出度が高いです。

意味 現代語訳例 判別ポイント
① 現在推量 今ごろ〜しているだろう 動作や状態が、現在進行形で起こっていることに対する推量。
② 現在の様子 今ごろ〜しているようだ 話し手が直接見聞きせず、間接的に現在の状況を推測する。
③ 原因推量 どうして〜なのだろう、たぶん〜だからだろう 疑問詞(いかに、など)を伴うことが多い。「なぜそうなのか」という原因を探る推量。
④ 伝聞・婉曲 〜とかいう、〜という 会話文などで、不確かな情報を伝える。文末より文中に多い。

【判別訓練:特に重要な「原因推量」の見極め】

「らむ」が「どうして〜なのだろう」という原因推量になる場合、直前に疑問詞(いかに、など)がなくても、文脈が「理由を考えている」状況であれば、原因推量となることがあります。

  • 訓練法: 「らむ」が出てきたら、まず「今ごろ〜しているだろう」と訳してみる。もし文脈が不自然であれば、「なぜ〜なのだろうか?」と「なぜ」を補って訳し直す。

  • 例: かぐや姫いかになりにけむ。 かぐや姫は、どうなってしまったのだろうか。(原因推量)


💡 2. 助動詞「べし」の核心:未来への「断定的な意志」

助動詞「べし」は、推量の助動詞の中でも、「話し手の強い意志や確信」を伴う点で「らむ」とは大きく異なります。

接続は「終止形」(ラ変型には連体形)に接続します。

【「べし」の6つの主要な意味(スイカシテメ)】

「べし」は、6つの意味を頭文字で覚える「スイカシテメ」という暗記法が一般的です。この中でも、推量、意志、命令、当然は入試の選択肢によく登場します。

意味 現代語訳例 判別ポイント
① 推量(ス) 〜だろう、〜に違いない 客観的な根拠に基づいた未来の予測や確信。
② 意志(イ) 〜しよう、〜するつもりだ 主語が一人称(私)の場合。強い決意や願望。
③ 可能(カ) 〜できる、〜する能力がある 下に打消し語(ず、まじ)を伴って「〜できない」となることも多い。
④ 当然(シ) 〜するのが当然だ、〜すべきだ 道徳的、論理的にそうあるべきだという義務感。
⑤ 命令(テ) 〜しなさい 文末で使われる場合。
⑥ 適当(メ) 〜するのがよい、〜がふさわしい 軽い提案や助言。

【判別訓練:主語特定による意味の確定】

「べし」の意味を正確に確定するためには、「誰の動作・状態を説明しているか」、つまり主語の特定が最も重要です。

  1. 主語が一人称(私、我): 「意志」(〜しよう)が濃厚。

  2. 主語が二人称(あなた、君): 「命令」(〜しなさい)または「当然」(〜すべきだ)が濃厚。

  3. 主語が三人称(彼、彼女、物): 「推量」(〜だろう)または「当然」(〜のはずだ)が濃厚。

  • 例1(意志): 我、必ず敵を討つべし。 私は、必ず敵を討とう(討つ意志だ)。

  • 例2(命令): 急ぎ参るべし。 急いで参上しなさい。


📚 3. 「らむ」と「べし」の比較読解トレーニング

「らむ」と「べし」を並べて解釈することで、それぞれのニュアンスの違いが明確になり、読解の精度が向上します。

トレーニング①:過去形との接続による時間軸の確認

「らむ」は「現在」の推量、「べし」は「未来」の推量・意志を基本とします。

  • らむ 今、〜だろう(現在の状況を想像)

  • べし これから、〜だろう/〜しよう(未来への作用)

【時間差の例】

  • 都にや、恋しからむ(今ごろ都は恋しいだろうか。 現在の心情への推量)

  • 都にや、恋しかるべし(都は、きっと恋しいはずだ 客観的な未来への確信

トレーニング②:傍線部問題での解釈の絞り込み

入試で「らむ」や「べし」に傍線が引かれた場合、意味を絞り込むためのチェックリストを頭の中で展開します。

助動詞 優先的にチェックすべき項目
らむ 1. 文脈に疑問詞(いかに、など)があるか? 原因推量
2. 話し手がその場にいないか? 現在の様子
べし 1. 主語が「我」か? 意志
2. 主語が「あなた」か? 命令・当然
3. それ以外か? 推量・当然(文脈で確信度を判断)。

このチェックリストを使い、「まずは主語と文脈から最も可能性の高い意味を仮決定し、選択肢を絞り込む」という手順を習慣化しましょう。


✅ 4. まとめ:推量・意志の掌握が古文読解の鍵

古文の助動詞「らむ」と「べし」の理解は、単なる文法問題対策に留まりません。それは、登場人物の目には見えない心情や、物語を動かしている論理的な必然性を正確に読み取るための道具です。

  • 「らむ」は「今、どうなのか」という想像の翼を広げる。

  • 「べし」は「これからどうすべきか」という確信作用を示す。

このコアな違いを理解し、常に「主語」と「文脈」というヒントと照らし合わせながら、訓練を重ねてください。この二つの助動詞をマスターできれば、古文の読解において、曖昧さから生じる失点を劇的に減らし、安定した得点を獲得できるはずです。

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