小論文の対策を始めたばかりの受験生が、最初にして最大の勘違いをしてしまうポイントがあります。それは、「小論文とは、与えられたテーマに対して『立派な感想』や『独創的な意見』を書くものだ」と思い込んでしまうことです。
しかし、入試や試験における小論文の正体は、感想文でも作文でもありません。それは、提示された問題に対する「論理的な解答(ソリューション)」の提示です。
評価される小論文を書くために最も重要なのは、華やかな語彙力でも奇抜な発想でもなく、「問い」と「答え」が一本の強固な鎖でつながっていることです。この記事では、合格圏内に確実に滑り込むための、問いと答えの「黄金の論理構成」について徹底解説します。
1. なぜ「問い」と「答え」がズレてしまうのか
多くの受験生が、書いている途中で「何を書いているのかわからなくなる」という迷宮に迷い込みます。その原因のほとんどは、「問い」を正しく定義できていないことにあります。
設問の「問い」を無視してしまう
例えば、「AI社会における人間の役割について述べなさい」という設問に対し、「AIがいかに便利か」を延々と書いてしまうケースです。これは、問いに対して答えているのではなく、テーマ(AI)について知っていることを並べているだけに過ぎません。
自分で立てた「問い」を忘れてしまう
小論文では、設問からさらに踏み込んで、自分で「では、なぜ〇〇なのか?」という具体的な問いを立てることが推奨されます。しかし、序盤で立てた問いを放置したまま、結論で全く別の話を始めてしまう答案が後を絶ちません。
2. 評価を劇的に上げる「問い」の設計図
小論文の質は、書き始める前の「問いの立て方」で8割決まります。以下の3つのステップで、論理の出発点を固定しましょう。
ステップ1:設問の意図を「疑問文」に変換する
設問が提示されたら、まずはそれを「〜か?」という明確な疑問文に置き換えます。「格差社会について」というテーマなら、「現代の日本において、格差はなぜ是正されるべきなのか?」といった形です。
ステップ2:問いの「射程」を絞る
広すぎる問いは、答えも抽象的で薄っぺらなものになります。「教育のあり方」ではなく、「デジタル化が進む教育現場において、教師に求められる対面指導の役割とは何か?」といった具合に、フォーカスを絞ります。
ステップ3:問いと答えの「一貫性」を視覚化する
頭の中だけで考えず、構成案の段階で「問い」と「結論(答え)」を矢印で結んでみましょう。この矢印が真っ直ぐであればあるほど、読み手にとってストレスのない、説得力のある文章になります。
3. 「論理の鎖」を繋ぐための構成法
問いに対する答えを提示する際、その間を埋める「論理」が弱ければ、答えの正当性は証明されません。ここでは、問いと答えを強固に結びつけるための「三段構成」を提案します。
① 導入:問いの提示(イシュー)
文章の冒頭で、「現在、〇〇という問題がある。では、私たちはこれにどう向き合うべきか(問い)」と、これから何を解決するのかを宣言します。これが読み手への「地図」になります。
② 本論:答えへの根拠(エビデンス)
「私は、△△だと考える(答えの予報)。なぜなら、第一に……」と、結論を支える理由を述べます。ここで大切なのは、「問いに対する直接的な原因」を深掘りすることです。
③ 結論:答えの再定義(アンサー)
最後にもう一度、導入で立てた問いに対する最終的な回答を述べます。導入の問いと結論の答えが、鏡合わせのように対応していることが理想です。
4. 減点を防ぐ「セルフチェック」のポイント
書き終えた後、あるいは下書きの段階で、以下の2点を自分に問いかけてみてください。
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「その答えは、その問いに直接対応しているか?」 「お腹が空きましたか?」という問いに「今日は月曜日です」と答えていないか。極端な例ですが、緊張した入試現場ではこのレベルのズレが頻発します。
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「問いをすり替えていないか?」 難しい問いに対して、自分が答えやすい別の問いに無意識にスライドさせていないか。論理の「逃げ」は、採点官にすぐに見抜かれます。
5. 保護者の方へ:お子様の「論理力」を家庭で育むために
小論文対策は、机に向かって文字を書く時間だけではありません。日常生活の中での「なぜ?」という問いかけが、最高のトレーニングになります。
お子様がニュースを見て「このニュース、ひどいね」と言ったとき、「そうだね、じゃあ、どうしてこれが問題だと言われているのかな?」と、問いを一段深めるパスを出してあげてください。 「感情(ひどい)」を「問い(なぜ問題か)」へと変換し、自分なりの「答え(根拠)」を探すプロセスこそが、小論文の核となる力です。
ご家庭での会話が、お子様の思考の広がりを「論理の型」に落とし込むための第一歩となります。
6. まとめ:小論文は「問い」への誠実な回答である
小論文において、独創的なアイデアはプラスアルファの要素に過ぎません。それよりも遥かに重要なのは、「問いに対して、逃げずに、論理的に答えているか」という誠実さです。
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設問を正確な「疑問文」に置き換える。
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その問いに対する「答え」を最初に決める。
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問いと答えを繋ぐ「理由」を客観的な事実で補強する。
この「問い」と「答え」の関係性を意識するだけで、あなたの文章は驚くほど読みやすく、説得力に満ちたものに変わります。採点官が求めているのは、あなたの「感性」ではなく、プロフェッショナルな「思考のプロセス」なのです。
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