― 説得力のある文章は “データ × 自分の意見” の掛け算で生まれる ―
小論文の指導をしていると、必ずぶつかる壁があります。
それは「データを書くべきか、それとも自分の意見を中心にするべきか」という迷いです。
実際、受験生の多くが次の2種類のどちらかに偏ります。
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データばかり並べて、自分の考えが見えない文章
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主観だけで書き、根拠が弱くて説得力に乏しい文章
小論文は単なる作文ではなく、読み手を納得させる “論理的な文章” を求められる場。
だからこそ 客観データと主観的意見のバランス が重要です。
この記事では、受験小論文で最も重要な力のひとつである
「客観的データ × 主観的意見」の組み合わせ方
を、誰でもすぐ実践できる形で詳しく解説します。
1. そもそも「客観性」と「主観性」は何が違うのか?
まず定義をはっきりさせておきます。
● 客観性(Objective)
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誰が見ても同じ情報
-
統計・調査・数値・歴史的事実など
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「書き手の感情が入っていない情報」
例)
・総務省の調査では〜
・10代のSNS利用率は〜%
・高齢化率は過去最高の〜%
● 主観性(Subjective)
-
書き手の考え・価値観・経験
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理念・結論・問題意識・提案
例)
・私はこのデータから〜と考える
・この状況は改善すべきだ
・より良い社会のために〜が必要だ
客観データは「根拠」
主観意見は「方向性」
この二つが組み合わさって初めて、文章が説得力を持ちます。
2. バランスの基本方針:結論 → 根拠(客観) → 展開(主観)
最もわかりやすく、読み手にも伝わりやすい構成が次の型です。
◆ 小論文の黄金構成
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結論(主観)
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根拠(客観データ)
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意見の展開(主観)
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まとめ(主観)
この流れを守ると、
「最初に自分の主張が明確になり、その後に客観データで補強する」
という読みやすい構造になります。
例:
結論)
高齢者の孤立を防ぐためには、地域コミュニティの再構築が必要である。
客観)
内閣府の調査によれば、65歳以上の一人暮らしは過去最多の〜%。
また、地域とのつながりが弱いほど悩みを抱えやすいというデータがある。
展開)
私は学生ボランティアで高齢者と関わった際、会話の中で孤独感を訴える声を多く聞いた。
この経験から、単に福祉制度を充実させるだけでなく、地域全体での支え合いが必要だと考える。
まとめ)
だからこそ、行政だけでなく地域全体が関わる仕組みづくりが重要である。
ポイントは、客観と主観が交互に登場していること。
これにより文章にリズムが生まれ、説得力が一気に増します。
3. 客観データの使い方:3つのルール
データを入れると文章は強くなります。
しかし、ただ数字を並べても意味はありません。
● ルール①:1つか2つで十分
小論文はデータの論文ではありません。
数字が多いほど良いわけではなく、最も効果的な1〜2個を厳選しましょう。
● ルール②:出典を示す(可能な範囲で)
○ 総務省
○ 厚生労働省
○ 文部科学省
○ 内閣府
など、信頼できる機関の名前を出すだけで説得力が大幅にアップ。
※厳密な年度や小数点以下まで覚える必要はありません。
● ルール③:データを“説明”ではなく“使用”する
数字を並べるだけだと説明文になります。
悪い例)
10代のSNS利用率は80%です。SNSには〜の問題があります。
良い例)
10代のSNS利用率は80%を超えており、この環境は若者の生活に欠かせない存在になっている。
だからこそ、情報リテラシー教育の充実が必要だと考える。
データは必ず「だから私は〜だと考える」につなげる。
これが“データを使う”ということです。
4. 主観意見を強くする方法:体験・価値観・比較
主観的な考えを強くするには、次の3要素が有効です。
● ① 体験(経験)
受験小論文では、個人の経験を入れると急に説得力が出ます。
例)
私はボランティア活動の中で〜を感じた
部活動での経験から〜が大切だと考えた
※ただし「感想」にならないよう注意。
→ 必ず「そこから何を理解したのか」に言及する。
● ② 価値観(大切にしていること)
受験生が書く文章は、読み手である大学が「思考の癖」を見たいと思っています。
例)
私は多様性を尊重する社会が必要だと考える
私は人と人をつなぐ仕組みに価値があると思う
こうした“価値観”の表明は主観の軸になります。
● ③ 比較(どちらの方が/なぜこちらか)
比較を使うと論理性が大幅にアップします。
例)
福祉制度の充実だけでなく、地域コミュニティの支援も重要だ。
なぜなら制度は「点」での支援だが、地域は「線」で支え続ける役割を持つからである。
比較は論理展開を滑らかにし、主張に深みを与えます。
5. 最強のバランス:客観(データ) → 主観(体験) → 導く結論
最強に説得力が上がるのが、この流れです。
◆ バランス型の典型例
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客観データ
「若者の運動不足は〜%と増加している」 -
主観(体験)
「私は部活動で体力づくりの重要性を実感した」 -
結論
「だから学校での日常的な運動の機会を確保することが必要だ」
データという“根拠”に、経験という“リアルな声”が重なることで、
読み手は「この人の結論は信頼できる」と感じます。
6. 実際の答案で見る良い例と悪い例
● 悪い例:データ偏重
10代のSNS利用率は80%です。中には依存状態になる人もいます。
SNSには危険が多く、トラブルも増えています。
SNSの使用は問題なので、規制するべきです。
→ 数字はあるが、筆者の意見がぼんやりしている
→ なぜ規制なのかの論理が弱い
→ 経験も価値観もなし
● 良い例:データ × 主観のバランス型
総務省の調査では、10代のSNS利用率が80%を超え、日常生活に深く浸透していることがわかる。
私が中学生の頃、SNSでの誤解が原因で友人関係が悪化した経験がある。
この経験から、単に利用時間を規制するのではなく、情報の受け取り方や距離感を学ぶ教育が必要だと考える。
SNSは使い方次第で大きな力になるからこそ、正しく使うための環境づくりが重要である。
→ データで問題を提示
→ 体験で主観的な“実感”を伝える
→ 解決策に自然に結論がつながっている
7. 書くときのチェックリスト(保存推奨)
最後に、受験小論文を書く際に必ず確認したい
**「客観 × 主観チェックリスト」**をまとめます。
◆ 客観データ
□ 信頼できる機関のデータを使っているか
□ データは1〜2個に絞っているか
□ データの後に「だから私は〜と考える」と主観につなげたか
◆ 主観意見
□ 結論が冒頭ではっきり示されているか
□ 体験または価値観が盛り込まれているか
□ 具体的な解決策や提案に落とし込めているか
◆ 全体構成
□ 結論 → 根拠(客観) → 展開(主観) → まとめ
□ 主観と客観が交互に登場している
□ 説得力のある文章になっているか
まとめ:バランスは「混ぜる」ことではなく「役割を分ける」こと
客観データと主観意見のバランスとは、
「同じ量を入れる」という意味ではありません。
重要なのは
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客観は “根拠” を与える役割
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主観は “方向性と提案” を示す役割
という“役割分担”を理解することです。
この構造を意識するだけで、あなたの小論文は見違えるほど論理的になります。
大学が求めるのは、膨大なデータの記憶力ではなく、
情報を根拠として使い、自分の考えを論理的に示せる力です。
ぜひこの記事の方法を使い、次の小論文練習から実践してみてください。


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