共通テストの現代文(特に評論)を読む際、多くの受験生が「文章が難解で抽象的だ」と感じる原因の一つに、「〜化」「〜性」「〜的」といった、抽象度の高い接尾辞を持つ言葉の多用があります。
例えば、「グローバル化」「多様性」「客観的」といった言葉は、日常会話でも使われますが、評論文の中では、筆者の議論の核となる専門的な概念として機能します。これらの言葉の意味を曖昧なまま読み進めてしまうと、筆者の主張や、キーワードの定義を誤解し、結果として設問で失点してしまいます。
これらの接尾辞は、評論文の主題(テーマ)を形成する重要なサインであり、これらを正確に読み解くことは、抽象的な概念を具体的に捉えるための、極めて実践的な技術です。
この記事では、「〜化」「〜性」「〜的」といった接尾辞が、評論文の中でどのような役割を果たし、どのように解釈すべきかを体系的に解説します。この読解技術を習得することで、共通テスト現代文の抽象的な文章への苦手意識を克服し、確実に正答率を上げることができます。
💡 1. 評論文頻出の3つの接尾辞が持つ「機能」
これらの接尾辞は、単なる言葉の飾りではなく、評論文の中で概念の性質や変化を定義づける、重要な文法的な機能を持っています。
機能①:「〜化」(-ization, -fication):動きと過程を示す
-
意味: ある状態から別の状態へ移行するプロセス、またはその結果。「〜になること」「〜に変えること」。
-
例: グローバル化(Global → Globalize)
-
読解上の注意点: 「〜化」という言葉を見たら、筆者はその「変化の過程」や、その変化がもたらす「結果」について論じていると予測できます。筆者が「〜化」を肯定的に捉えているか、否定的に捉えているかが、主張の核になりやすいです。
機能②:「〜性」(-ty, -ness):本質と性質を示す
-
意味: ある概念が本来持っている性質、または特性。「〜であること」。
-
例: 多様性(Diverse → Diversity)
-
読解上の注意点: 「〜性」は、その言葉が指す概念の「定義」そのものに関わります。筆者が「A性」について語るとき、「A性とは何か」という定義と、「A性をどう評価するか」という主張がセットで論じられます。
機能③:「〜的」(-al, -ic):関係性と視点を示す
-
意味: あるものに関するさま、またはある視点からの見方。「〜のような」「〜の性質を持つ」。
-
例: 客観的(Objective)
-
読解上の注意点: 「〜的」は、その概念が他のものとどう関連しているかを示します。「A的」という言葉を見たら、「A的ではないものは何か(対立概念)」、または「A的という視点から見るとどうなるか」という、視点の提示が議論の中心になります。
📝 2. 「〜化」の読み解き方:主張の「ベクトル」を特定する
「〜化」は、筆者の主張の方向性(ベクトル)が最も明確に現れる言葉です。読解の際は、以下の2点を徹底的に追跡します。
追跡術①:「起点」と「終点」を探す
「〜化」は変化の過程ですから、「何が変化する前の状態(起点)か」と「変化した後の状態(終点)か」を明確にします。
-
例: 「情報化社会」
-
起点: 情報を共有する手段が限定的であった社会
-
終点: 誰もが瞬時に情報にアクセスし、共有できる社会
筆者は、「起点」にあった問題点を解決するものとして「終点」を提示しているのか、あるいは「終点」がもたらした新たな問題点を指摘しているのか、という論理の構造を把握します。
追跡術②:「肯定」か「否定」かの判断
「〜化」という言葉の周辺には、必ず筆者の評価(肯定・否定)を示す表現があります。
-
肯定的な表現: 「解放する」「可能にする」「多様化をもたらす」「進歩」「効率化」
-
否定的な表現: 「均質化」「疎外」「没個性化」「固定化」「危機」
「〜化」を見たら、すぐに周囲の動詞や形容詞をチェックし、筆者がその変化をどのように評価しているのかを判断することが、主張の核を掴む最短ルートです。
📚 3. 「〜性」と「〜的」の読み解き方:定義と対立構造の特定
「〜性」と「〜的」は、特に定義(筆者の造語)や対立構造を生み出しやすい接尾辞です。
訓練①:「イコール」の定義を特定する(〜性)
筆者が「A性」という言葉を導入する際、必ずその「A性とは何か」という定義を、その段落内、あるいは直前の段落で述べています。
-
実践: 「客観性とは、特定の視点に縛られず、普遍的な基準で判断できる性質である」のような、「〜性とは、〜である」という形の定義文を探します。
-
重要性: 設問で「筆者の考える『A性』の意味」が問われた場合、この定義文がそのまま正解の根拠となります。
訓練②:「対立概念」のセット化(〜的)
「〜的」という言葉は、対立する概念とのペアで使われることが非常に多いです。
-
セットで覚えるべき対立例:
-
客観的 ↔ 主観的
-
論理的 ↔ 感情的
-
普遍的 ↔ 個別的
-
科学的 ↔ 直感的
-
評論文で「客観的」という言葉を見たら、筆者は次の瞬間、「主観的」という対立する概念を持ち出して、どちらが重要かを論じる、あるいはどちらかの限界を指摘する可能性が高いと予測できます。文章の展開を予測しながら読むことで、情報処理のスピードが格段に向上します。
✅ 4. まとめ:抽象語を「技術」で具体化する
共通テスト現代文の評論文は、専門的な概念を扱うため抽象的に見えますが、それはすべて「〜化」「〜性」「〜的」といった接尾辞を持つ言葉で、論理的に構造化されています。
現代文の苦手意識を克服し、安定した点数を取るためには、これらの抽象的な言葉を「センス」や「感覚」で捉えるのではなく、「論理的な機能」として捉え直す技術が必要です。
-
〜化: 筆者の「変化の評価(肯定か否定か)」を追う。
-
〜性: 筆者がその概念に与えた「定義」を特定する。
-
〜的: それと「対立する概念」をセットで認識する。
この読解技術を意識して演習を重ねることで、あなたは抽象的な評論を恐れることなく、筆者の主張の核心に一歩踏み込んで、確実に正解を導き出せるようになるでしょう。


コメント